第1章:基本情報

まずは、韓国という国そのものについて理解を深めましょう。
基本的な知識は、旅行をよりスムーズで豊かなものにしてくれます。

1-1. 概要

  • 正式名称: 大韓民国 (Republic of Korea)
  • 首都: ソウル特別市
  • 人口: 約5,175万人 (2023年時点)
  • 言語: 韓国語(公用語)。ソウルなどの都市部や観光地では、日本語や英語が通じる場所も多いですが、簡単な韓国語の挨拶を覚えておくと、現地の人々とのコミュニケーションがより楽しくなります。
  • 通貨: ウォン (₩, KRW)。紙幣は50,000、10,000、5,000、1,000ウォンの4種類、硬貨は500、100、50、10ウォンの4種類が主に使用されます。
  • 時差: 日本との時差はありません。
  • 宗教: 仏教とキリスト教が二大宗教ですが、特定の宗教を持たない人も多くいます。

ソウル以外の主要都市

  • 釜山 (プサン): 韓国第2の都市。新鮮な海産物が味わえるチャガルチ市場や、カラフルな街並みが美しい甘川文化村、美しいビーチで知られる海雲台(ヘウンデ)など、港町ならではの魅力があります。
  • 慶州 (キョンジュ): 新羅王朝の古都。「屋根のない博物館」とも呼ばれ、仏国寺や石窟庵といった世界遺産をはじめ、数多くの史跡が残っています。
  • 済州島 (チェジュド): 韓国のハワイとも呼ばれるリゾートアイランド。美しい自然景観が魅力で、漢拏山(ハルラサン)や溶岩洞窟などが世界自然遺産に登録されています。

1-2. ビザ(査証)

日本のパスポートを所持している場合、観光・商用目的で90日以内の滞在であれば、ビザは不要です。ただし、パスポートの残存有効期間が3ヶ月以上必要となるため、出発前に必ず確認しましょう。
(※2025年12月31日までの期間限定で、電子渡航認証システム「K-ETA」の申請も免除されていますが、制度は変更される可能性があるため、渡航前には駐日韓国大使館のウェブサイトなどで最新情報を確認することをおすすめします。)

1-3. 気候と服装

韓国は日本と同じく四季がはっきりしており、気候も似ていますが、大陸性気候の影響で冬の寒さは日本よりも厳しく、夏は蒸し暑さが特徴です。

  • 春 (3月~5月): 移動性高気圧の影響で晴天の日が多く、穏やかで過ごしやすい旅行のベストシーズン。桜やレンギョウなどの花が美しく咲き誇ります。ただし、朝晩は冷え込むこともあるため、重ね着できる服装が便利です。黄砂やPM2.5(微小粒子状物質)の飛来が多くなる時期でもあります。
  • 夏 (6月~8月): 高温多湿で蒸し暑い日が続きます。特に6月下旬から7月下旬は「梅雨(チャンマ)」の時期で雨が多くなります。8月は気温が30℃を超える日も多く、日本の夏と同様に熱中症対策が必要です。通気性の良い服装を準備しましょう。
  • 秋 (9月~11月): 空気が澄んで晴天の日が多く、春と並ぶ旅行のベストシーズン。紅葉が美しく、気候も穏やかで快適に過ごせます。日中は過ごしやすいですが、朝晩の気温差が大きくなるため、羽織るものがあると安心です。
  • 冬 (12月~2月): シベリア高気圧の影響で、寒く乾燥した日が続きます。ソウルの平均気温は氷点下となり、時には-10℃を下回ることも。厚手のコート、マフラー、手袋、帽子などの防寒対策は必須です。路面が凍結することもあるため、滑りにくい靴を選びましょう。

第2章:韓国へのアクセス

日本から韓国へは、飛行機と船が主な交通手段です。
予算や時間、目的に合わせて選びましょう。

2-1. 飛行機

最も一般的で便利なアクセス方法です。
日本の主要都市からソウル(仁川国際空港、金浦国際空港)、釜山(金海国際空港)、済州(済州国際空港)などへ多数の直行便が就航しています。

  • 主要航空会社: 大韓航空、アシアナ航空、JAL、ANA
  • LCC (格安航空会社): チェジュ航空、ジンエアー、ティーウェイ航空、エアソウル、エアプサン、ピーチ、ZIPAIRなど

LCCを利用すれば、往復2万円台から渡航できることもあり、気軽に韓国旅行を楽しめます。
飛行時間は東京(成田/羽田)からソウルまで約2時間半、福岡からであれば約1時間半と非常に短いです。

  • 仁川国際空港 (ICN): 韓国最大のハブ空港。世界各国からの便が発着します。ソウル市内へのアクセスは、空港鉄道A'REX(直通列車で約43分)、リムジンバス、タクシーなどがあります。
  • 金浦国際空港 (GMP): ソウル市内に近く、主に羽田空港からの便が発着します。市内へのアクセスが非常に便利で、地下鉄やバス、タクシーを利用できます。

2-2. 船(フェリー)

時間に余裕がある場合や、多くの荷物を運びたい場合には船も選択肢になります。
福岡、大阪、下関などから釜山へフェリーが運航しています。
時間はかかりますが、飛行機とは違った船旅の風情を楽しむことができます。

第3章:国内の交通

韓国国内、特にソウルなどの大都市では公共交通機関が非常に発達しており、観光客でも簡単に移動できます。

3-1. 交通カード「T-money」

日本のSuicaやPASMOのようなチャージ式の交通カードです。
地下鉄やバス、タクシーの支払いがワンタッチででき、現金で支払うよりも運賃が割引になるため、韓国旅行の必須アイテムです。
コンビニや駅の券売機で購入・チャージが可能で、一部のコンビニなどでの買い物にも利用できます。

3-2. 地下鉄

ソウルや釜山などの大都市では、地下鉄が最も便利で分かりやすい移動手段です。
路線ごとに色分けされており、駅名には日本語表記もあるため、観光客でも安心して利用できます。
料金も安く、渋滞の心配もありません。

3-3. バス

市内バスは、市民の足として網の目のように路線が張り巡らされています。
地下鉄では行けないような細かい場所へもアクセスできますが、路線が複雑なため、初心者には少しハードルが高いかもしれません。
乗車時と降車時にT-moneyカードをタッチします。

3-4. タクシー

初乗り料金が日本に比べて安く、気軽に利用できます。

  • 一般タクシー: オレンジ色や銀色の車体が一般的。
  • 模範タクシー: 黒塗りの車体で、料金は割高ですが、サービスが良く、日本語が通じる運転手も多いです。
  • 国際タクシー: オレンジ色に「International TAXI」と書かれたタクシーで、日本語、英語、中国語など外国語での対応が可能です。

最近では、「Kakao T」などの配車アプリを利用すると、目的地を伝えやすく、料金も事前に確認できるため便利です。

3-5. 都市間の移動

ソウルから釜山など、他の都市へ移動する場合は、高速鉄道や高速バスが便利です。

  • KTX (韓国高速鉄道): 韓国版新幹線。ソウルと釜山を約2時間半で結びます。速く快適ですが、料金は比較的高めです。
  • SRT (高速鉄道): KTXと同様の高速鉄道。ソウル江南エリアの水西(スソ)駅を起点としています。
  • 高速バス: KTXよりも時間はかかりますが、料金が安く、韓国全土の主要都市を網羅しています。

第4章:食事(グルメ)

韓国旅行の最大の楽しみの一つがグルメ。定番料理からB級グルメまで、多彩な食文化を堪らないでしょう。

4-1. 定番の韓国料理

  • 焼肉(プルコギ、カルビ、サムギョプサル): 甘辛いタレに漬け込んだ牛肉を焼く「プルコギ」、牛のあばら肉を焼く「カルビ」、豚の三枚肉を焼く「サムギョプサル」は絶対に外せません。サンチュなどの野菜に巻いて食べるのが韓国スタイルです。
  • チゲ・タン(鍋料理): キムチと豆腐の「キムチチゲ」、豆腐が主役の「スンドゥブチゲ」、部隊で食べられていたことから名がついた「プデチゲ」など、種類豊富な鍋料理は、寒い冬にぴったりです。鶏を丸ごと煮込んだ「タッカンマリ」や滋養強壮に良い「サムゲタン」も人気です。
  • ビビンバ: ご飯の上にナムルや肉、卵などを乗せ、コチュジャンで混ぜて食べる丼料理。石焼きの「トルソッビビンバ」は、おこげも楽しめます。
  • 麺類: さっぱりとしたスープの「冷麺(ネンミョン)」、甘辛いタレで和える「ビビン麺」、韓国風のジャージャー麺「チャジャンミョン」など、麺料理も多彩です。
  • その他: 韓国風海苔巻きの「キンパ」、海鮮や野菜の韓国風お好み焼き「チヂミ」、鶏肉を甘辛く炒めた「タッカルビ」、生のワタリガニを醤油に漬けた「カンジャンケジャン」など、魅力的な料理が数多くあります。

4-2. 屋台・B級グルメ

明洞(ミョンドン)や南大門市場(ナンデムンシジャン)などの屋台では、安くて美味しいB級グルメが楽しめます。
甘辛い餅の煮込み「トッポッキ」、韓国風おでん「オデン」、揚げ物「ティギム」、ホットク(中に黒砂糖やナッツが入ったおやき)などが人気です。

4-3. 食事のマナー

  • 食器: ご飯や汁物の器は、テーブルに置いたままスプーンで食べるのが基本です。器を持ち上げるのはマナー違反とされています。
  • 箸とスプーン: 韓国では、ご飯や汁物はスプーン(スッカラッ)、おかずは箸(チョッカラッ)と使い分けます。
  • おかず(パンチャン): 料理を注文すると、キムチやナムルなどの小さなおかず(パンチャン)が無料で何皿も出てきます。これらはおかわり自由な場合が多いです。
  • 年長者を敬う: 食事は年長者が箸をつけてから始めるのがマナーです。お酒を注ぐ際や受ける際も、目上の方への敬意を示す作法があります。

第5章:ショッピング

韓国はショッピング天国。プチプラからハイブランドまで、あらゆるものが揃います。

  • コスメ: BBクリームやクッションファンデーションの発祥地であり、質の高いコスメが手頃な価格で手に入ります。明洞には数多くのブランドの路面店が並び、セールやサンプル提供も頻繁に行われています。
  • ファッション: 東大門のファッションビルや、高速ターミナル駅の地下街「GOTO MALL」では、トレンドの洋服や靴、アクセサリーが驚くほどの安さで購入できます。
  • 食品・お土産: 大型マート(ロッテマート、emartなど)では、韓国海苔、お菓子、インスタントラーメンなど、ばらまき用のお土産を探すのに最適です。

第6章:通信環境

旅行中の情報収集や連絡に、インターネットは不可欠です。

  • レンタルWi-Fiルーター: 複数人で利用する場合や、複数のデバイスを接続する場合に便利です。日本の空港や韓国の空港でレンタル・返却が可能です。
  • SIMカード/eSIM: スマートフォンに直接挿入(または設定)して利用します。一人旅や、荷物を増やしたくない場合に適しています。
  • フリーWi-Fi: 空港、地下鉄、カフェなど、公共の場所ではフリーWi-Fiが利用できる場所が多いですが、セキュリティ面での注意が必要です。

第7章:チップ

韓国でのチップ文化について:基本的に不要、しかし例外も多少あります。

結論から言うと、韓国には基本的にチップの習慣はありません。 旅行者は、レストラン、ホテル、タクシーなど、ほとんどの場面でチップを支払う必要はありません。

日本と同様に、サービス料は基本的に料金に含まれているという考え方が一般的です。
そのため、チップを渡そうとすると、店員が困惑したり、受け取りを辞退されたりすることもあります。
場合によっては、失礼にあたると受け取られる可能性もゼロではありません。

感謝の気持ちは、チップではなく
「감사합니다(カムサハムニダ/ありがとうございます)」
という言葉で伝えるのが最も自然で喜ばれます。

状況別のチップ事情

1. レストラン・カフェ

一般のレストランやカフェでは、チップは全く必要ありません。
会計はテーブルではなく、入口近くのレジで行うのが一般的です。
料金にサービス料が含まれているため、表示された金額だけを支払います。
最近、ごく一部のカフェなどで欧米文化の影響を受けた「チップジャー(チップを入れる瓶)」が置かれていることもありますが、これは非常に稀なケースであり、入れる義務は全くありません。

2. ホテル

  • ベルボーイ・ポーター: 荷物を運んでもらった場合でも、基本的にチップは不要です。
  • ベッドメイキング(枕銭): 部屋の清掃スタッフに対して、枕元にチップを置く必要もありません。
  • コンシェルジュ: 特別な予約を頼むなど、格別のサービスを受けた場合は、感謝の気持ちとして少額(1,000~5,000ウォン程度)を渡すことも考えられますが、これも義務ではありません。

ただし、世界的なチェーンの高級ホテルでは、外国人観光客の対応に慣れたスタッフがチップを受け取ることに抵抗がない場合もあります。
それでも、渡さなかったからといってサービスが悪くなることはありません。

3. タクシー

タクシーの運転手にもチップは不要です。
メーターに表示された料金を支払いましょう。もし現金で支払う際に細かいお釣り(100ウォンなど)が出た場合、「잔돈은 괜찮아요(チャンドヌン ケンチャナヨ/お釣りは結構です)」と言って受け取らないことは、スマートな感謝の表現として受け入れられることがあります。
最近では、配車アプリ「カカオT」の一部サービスに、良い評価をした乗客が任意でチップを支払える機能が試験的に導入されましたが、韓国内では「チップ文化を持ち込むな」という批判的な意見が多く、広く浸透しているわけではありません。

4. チップが例外的にあり得るケース

義務ではありませんが、以下のような状況では「心付け」として感謝を示すことが容認される場合があります。

  • 観光ツアーのガイドやドライバー: 特に外国人観光客を専門とするツアーで、ガイドやドライバーが予定以上の素晴らしいサービスを提供してくれたと感じた場合、感謝のしるしとしてツアーの最後に少額を渡すと喜ばれることがあります。これもあくまで特別な感謝を示すためのもので、必須ではありません。
  • エステやマッサージ: 高級スパなどで非常に満足のいくサービスを受けた場合。しかし、これも一般的ではありません。

第8章:安全・その他

8-1. 治安

韓国の治安は比較的良好ですが、観光客を狙ったスリや置き引きなどの軽犯罪には注意が必要です。
特に、人混みの多い場所では手荷物から目を離さないようにしましょう。
夜間の女性の一人歩きは、大通りを歩くなど注意を払うことが賢明です。

8-2. 電圧とプラグ

韓国の電圧は220V、周波数は60Hzです。プラグの形状はCタイプまたはSEタイプが主流です。
日本の電化製品を使用する場合は、変圧器と変換プラグが必要になります。
ただし、スマートフォンの充電器など、多くの製品は100V-240Vに対応しているため、変換プラグさえあれば使用可能です。

8-3. トイレ

公共のトイレは比較的清潔です。
ただし、古い建物や一部の飲食店では、トイレットペーパーを便器に流さず、備え付けのゴミ箱に捨てるスタイルの場合があるので、注意書きを確認しましょう。

8-4. 祝日

旧正月(ソルラル)と秋夕(チュソク)は、韓国の二大名節です。
この期間は多くの人々が帰省するため、交通機関が混雑し、休業する店も多くなります。
旅行の計画を立てる際は、祝日も考慮に入れると良いでしょう。

まとめ

韓国は、近くて手軽に異文化体験ができる魅力的な国です。
この記事で紹介した基本情報を参考に、しっかりと準備をして、あなただけの素晴らしい韓国旅行を計画してください。
美味しい料理に舌鼓を打ち、最新のショッピングを楽しみ、歴史と文化に触れる、忘れられない思い出があなたを待っています。

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