ソウル市内だけでなく、その近郊にも日帰りで訪れることができる魅力的な観光地が数多く存在します。
歴史的な遺産から、美しい自然など、多彩な顔ぶれが揃っています。
ここでは、社員旅行等の団体旅行で行くソウル近郊の主要な観光地を人気と知名度を考慮した順番に5ヶ所厳選し、それぞれの魅力を詳しく解説します。

1. DMZ(非武装地帯)

世界で唯一の分断国家である韓国の現実を肌で感じることができる、最もユニークで衝撃的な場所がDMZ(Demilitarized Zone)、すなわち非武装地帯です。朝鮮戦争の休戦協定に基づき、韓国と北朝鮮の間に設けられた幅4km、長さ248kmに及ぶこの地帯は、今なお軍事的な緊張が続く場所であり、個人での自由な立ち入りは許可されていません。訪れるには、ソウル発の公認ツアーに参加する必要があります。

ツアーでは、北朝鮮が韓国に侵攻するために掘ったとされる「第3トンネル」の内部を歩いて見学できます。腰をかがめながら進むトンネルの先は、軍事境界線までわずか数百メートルの地点。南北分断の生々しい歴史を体感できる貴重な経験です。また、「都羅展望台」からは、高性能の望遠鏡を通して、北朝鮮側の宣伝村「機井洞(キジョンドン)」や開城(ケソン)工業団地の様子を垣間見ることができます。天気が良ければ、人々の姿が見えることもあり、すぐそこにありながら決して行くことのできない土地の存在に、複雑な思いを抱かせるでしょう。

板門店(パンムンジョム)の共同警備区域(JSA)を含むツアーでは、軍事境界線上に建てられた青い会談場の建物の内部に入り、韓国と北朝鮮の兵士が対峙する緊迫した空気を直接感じることができます。ここは歴史的な南北首脳会談が行われた舞台でもあり、ニュースで見た光景が目の前に広がる様は、忘れられない記憶となるはずです。ソウルからわずか1時間ほどの距離に、全く異なる世界が広がるDMZ。それは単なる観光地ではなく、平和の尊さを深く考えさせられる教育的な場所でもあります。

2. 水原華城(スウォンファソン)

ソウルから地下鉄で約1時間、水原市に位置する水原華城は、朝鮮王朝後期(18世紀末)の建築技術の粋を集めて築かれた壮大な城郭です。第22代王・正祖(チョンジョ)が、非業の死を遂げた父・思悼世子(サドセジャ)の墓を水原に移し、その周辺に理想的な新都市を建設するために築いたもので、その歴史的価値と建築美が高く評価され、1997年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。

全長約5.7kmに及ぶ城壁は、丘陵や平地といった自然の地形を巧みに利用して築かれており、東西南北に配された四大門(八達門、長安門など)をはじめ、砲台、やぐら、秘密の通路である暗門など、様々な軍事施設がほぼ完璧な形で保存されています。城壁の上をゆっくりと歩きながら、水原の街並みを一望するのは、この場所を訪れる最大の楽しみの一つです。

観光客は、城内を巡る「華城御車(ファソンオチャ)」に乗って楽に主要スポットを回ったり、国弓(韓国の伝統的な弓)体験をしたりと、様々なアクティビティを楽しむことができます。特に、西将台(ソジャンデ)の丘から眺める城郭の全景と夕景は格別です。また、華城行宮(ファソンヘングン)は、王が地方へ行幸する際に滞在した仮の宮殿で、数々の歴史ドラマのロケ地としても知られています。ここでは、守衛の交代儀式なども見学でき、朝鮮時代の雰囲気を満喫できます。ソウルから気軽にアクセスでき、歴史散策と美しい景観を同時に楽しめる水原華城は、韓国の歴史や建築に興味がある人にとって必見の場所です。

3. 南怡島(ナミソム)

ソウルから東へ約1時間半、江原道(カンウォンド)春川(チュンチョン)市の北漢江に浮かぶ半月形の島、それが南怡島です。ここは、日本でも大ヒットしたドラマ『冬のソナタ』の主要なロケ地として一躍有名になり、今なお国内外から多くの観光客が訪れるロマンチックな観光地として絶大な人気を誇っています。島へは専用のフェリーで渡りますが、対岸からワイヤーロープで一気に滑り降りる「ジップワイヤー」でスリル満点の入場をすることも可能です。

南怡島の最大の魅力は、その美しく管理された自然景観です。特に有名なのが、ドラマの象徴的なシーンで登場した「メタセコイアの並木道」。天に向かって真っすぐに伸びる木々が作り出す緑のトンネルは、歩いているだけで心が洗われるような清々しい空間です。秋には黄金色に色づき、冬には雪景色が広がるなど、四季折々に異なる表情を見せ、訪れる人々を魅了します。他にも、黄色い絨毯を敷き詰めたような「銀杏並木」や、春には桜が美しい「桜並木」など、島内には数多くの写真映えするスポットが点在しています。

島内は徒歩でも十分に回れますが、自転車や電気自動車をレンタルして、風を感じながら散策するのもおすすめです。また、ドラマの主人公の銅像や撮影シーンのパネルが設置されており、ファンにとっては聖地巡礼の楽しみもあります。島の中には、ギャラリーや工芸院、動物たちが放し飼いにされているエリア、レストランやカフェなども点在しており、一日中ゆっくりと過ごすことができます。「ナミナラ共和国」という独立した国家のコンセプトを掲げ、独自の通貨や国旗を持つなど、ユニークなブランディングも魅力の一つ。ソウルの喧騒を離れ、美しい自然の中でロマンチックなひとときを過ごしたいカップルや家族連れに最適な場所です.

4.韓国民俗村

ソウルからバスで約1時間の龍仁(ヨンイン)市に位置する韓国民俗村は、朝鮮時代の伝統的な家屋や生活様式を再現した広大な野外博物館です。全国各地から移築・復元された両班(貴族)の屋敷、農家、役所、書院など、約270棟もの伝統家屋が立ち並び、まるで時代劇の世界に迷い込んだかのような体験ができます。

この村の魅力は、単に建物が展示されているだけでなく、実際に当時の人々が生活していたかのような活気にあふれている点です。鍛冶屋や機織り、韓紙作りなどの工房では、職人たちが伝統的な技術を披露しており、見学したり、実際に体験したりすることができます。また、村の中では、農楽(ノンアク)の公演や伝統婚礼の再現、馬上武芸といった、躍動感あふれるパフォーマンスが毎日繰り広げられ、訪れる人々を楽しませてくれます。

近年では、スタッフたちが朝鮮時代のキャラクター(商人、役人、物乞いなど)になりきって、観光客に話しかけたり、コミカルな寸劇を繰り広げたりする「ウェルカム・トゥ・朝鮮」というイベントがSNSで話題となり、若い世代からも絶大な人気を集めています。これらの個性豊かなキャラクターたちとの交流は、韓国民俗村ならではのユニークな楽しみ方です。

『宮廷女官チャングムの誓い』や『太陽を抱く月』など、数々の有名な歴史ドラマや映画のロケ地としても使用されており、ドラマファンにとっては、見覚えのある風景を探しながら散策するのも楽しみの一つでしょう。子供から大人まで、韓国の伝統文化を楽しく学び、体験することができる韓国民俗村は、家族連れにも特におすすめの観光地です。

5. 全州韓屋村(チョンジュハノクマウル)

ソウルからKTX(高速鉄道)で約2時間と少し距離はありますが、日帰り旅行も十分に可能な範囲にあり、その圧倒的な知名度と魅力からソウル近郊旅行の定番となっているのが全州韓屋村です。その名の通り、約700棟もの伝統的な韓屋が密集する、韓国最大規模の韓屋村として知られています。北村韓屋村が坂道に広がる貴族の屋敷街であるのに対し、全州は平地に広がる庶民的な温かみと活気があるのが特徴です。

全州韓屋村の最大の楽しみ方は「モクバン(食べる放送)旅行」と言われるほど、多彩なグルメにあります。全州はユネスコ食文化創造都市にも認定されており、特に韓国料理の代表格であるビビンバ発祥の地として有名です。村内には数々のビビンバの名店があり、本場の味を堪能できます。また、食べ歩きグルメの天国でもあり、串焼き、揚げパン、手作りチョコパイなど、若者に人気のストリートフードが目白押しです。

もう一つの大きな楽しみが、韓服(ハンボク)体験です。村のいたるところにレンタルショップがあり、伝統的なものから現代風にアレンジされた華やかなものまで、様々なデザインの韓服を借りることができます。多くの観光客が韓服を身にまとい、美しい韓屋の街並みを背景に写真を撮る光景は、全州韓屋村の風物詩となっています。

村内には、朝鮮王朝を建国した太祖・李成桂の肖像画が祀られている「慶基殿(キョンギジョン)」や、西洋と東洋の建築様式が融合した美しい「殿洞(チョンドン)聖堂」といった歴史的な見どころも点在します。夜になるとライトアップされ、昼間とは異なるロマンチックな雰囲気に包まれます。伝統的な韓屋に宿泊する「韓屋ステイ」も人気で、韓国の伝統文化を心ゆくまで満喫したい人には、ぜひ訪れてほしい場所です。

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